こんな方におすすめの記事です
- マイカーを購入したばかりで、必要な防災グッズを揃えたい方
- 豪雨や冠水ニュースを見て、車内の安全対策に不安を感じている方
- 脱出ハンマーの正しい選び方や、どこに置くべきか知りたい方
- 万が一の事故や水没時に、家族や自分を守る知識を身につけたい方
台風や線状降水帯による局地的な豪雨、突然の河川氾濫など、近年は日本各地で激しい水害が発生しています。道路やアンダーパスが冠水し、自動車が立ち往生している光景をニュースで目にする機会も少なくありません。「自分は運転に慣れているから大丈夫」「都市部に住んでいるから水没することはない」と思っていても、大雨による道路の冠水や津波、交通事故による路外逸脱・落水など、車が水に取り囲まれる事態は誰にでも起こり得ます。
もちろん、最も大切なのは、冠水した道路に進入しないことや、危険を感じた段階で早めに車から避難することです。しかし、突然の浸水や事故などによって車内から出られなくなった場合には、脱出のための備えが重要になります。
車が水没すると、水圧によってドアが開けにくくなるほか、電動の窓が作動しなくなる可能性もあります。そのような状況では、サイドガラスやリアガラスを破砕して脱出口を確保しなければならないケースもあります。限られた時間の中で安全に脱出するためには、車載用脱出ハンマーを手の届く場所に備え、あらかじめ使い方を確認しておくことが大切です。
本記事では、車載用脱出ハンマーが必要となる場面から、種類や選び方、車内での適切な設置場所、万が一の際の使い方まで詳しく解説します。いざというときに慌てず行動できるよう、愛車に適した脱出ハンマーを備え、家族や同乗者も含めて使用方法を確認しておきましょう。
第1章 なぜ車載用脱出ハンマーが必要なのか?
「車が水没しても、ドアを開ければ脱出できるのでは?」「窓ガラスなら手や足で割れるのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、車が水没したり重大な事故に遭ったりした場合、普段とは大きく異なる状況に置かれるため、思うように脱出できない可能性があります。
まず大切なのは、冠水した道路には進入せず、危険を感じたら早めに車から避難することです。それでも突然の浸水や落水、事故などによって車内から脱出しなければならない事態に備え、脱出方法をあらかじめ知っておくことが重要です。
車内からの脱出では、シートベルトを外し、まず窓を開けることが基本です。しかし、窓が開かない場合や、ドア・窓からの脱出が難しい場合には、ガラスを破砕して脱出口を確保する必要があります。
ここでは、車載用脱出ハンマーが役立つ主な理由を、以下の3つに分けて解説します。
水没時にドアが開かなくなる理由(水圧の影響)
車が水中に入ると、ドアの外側には水圧がかかります。特に車内と車外で水位に差がある状態では、ドアの内側と外側にかかる圧力にも差が生じるため、ドアを開けることが難しくなる場合があります。
水深が増すほど水圧も大きくなるため、車が深く水に浸かった状態では、ドアを開けようとしても外側からかかる水圧によって大きな力が必要になります。さらに、車両が傾いたり横転したりしている場合は、ドアの位置や周囲の水の流れによって、通常のように開閉できないこともあります。
そのため、車が水中に入った場合は、ドアを無理に開けようとするよりも、まずシートベルトを外し、窓を開けて脱出することが基本です。電動パワーウィンドウが作動する可能性もあるため、まずはスイッチを操作して窓が開くか確認しましょう。
窓が開かない場合は、脱出ハンマーを使ってサイドガラスやリアガラスなどの脱出に適したガラスを破砕し、脱出口を確保します。水没時は時間に余裕があるとは限らないため、車が完全に沈むのを待つのではなく、早い段階で脱出行動に移ることが重要です。
パワーウィンドウが作動しなくなる可能性(電気系統への影響)
「ドアが開かないなら、パワーウィンドウを開けて脱出すればいい」と考えるのは間違いではありません。むしろ、車が水中に入った場合は、まずパワーウィンドウのスイッチを操作して、窓が開くか確認することが重要です。
ただし、車が浸水すると電気系統に影響が及び、パワーウィンドウが作動しなくなる可能性があります。車両の構造や浸水した場所、水位などによって状況は異なるため、「水没すれば必ず窓が開かなくなる」とは限りません。
そのため、車が水中に入ったら、まずシートベルトを外し、パワーウィンドウを操作してみましょう。窓が開けば、そこから速やかに脱出します。
一方、スイッチを操作しても窓が開かない場合は、脱出ハンマーを使ってサイドガラスやリアガラスなど、破砕可能なガラスを割って脱出口を確保します。水没時は状況が急速に変化する可能性があるため、「窓が開かなければガラスを破砕する」という次の行動をあらかじめ知っておくことが大切です。
なお、ハイブリッド車(HEV)や電気自動車(EV)についても、車種によって構造や浸水時の対応が異なります。万が一に備え、あらかじめ車両の取扱説明書で水没・浸水時の対応方法を確認しておきましょう。

フロントガラスとサイドガラスの違い(合わせガラスはハンマーでも割れない点に注意)
脱出ハンマーを備えていても、どのガラスを破砕すればよいのかを知らなければ、いざというときに脱出できない可能性があります。
自動車のガラスには、大きく分けて「合わせガラス」と「強化ガラス」があり、それぞれ割れ方や特徴が異なります。
- フロントガラス(主に合わせガラス)
2枚のガラスの間に樹脂製の中間膜を挟み込んだ構造です。衝撃を受けてもガラスが一気に飛散しにくく、ひびが入った状態でも中間膜によってガラス片が保持される特徴があります。そのため、一般的な脱出ハンマーでは、フロントガラスを脱出用の開口部として破砕するのは適していません。 - サイドガラス・リアガラス(強化ガラスが一般的)
強化ガラスは熱処理によって強度を高めたガラスで、破損すると細かな粒状になって砕ける特徴があります。そのため、車内から脱出する際には、破砕可能なサイドガラスやリアガラスを使用するのが基本です。
ただし、すべてのサイドガラスやリアガラスが強化ガラスとは限りません。 車種やグレードによっては、遮音性や安全性などを考慮して、サイドガラスなどに合わせガラスが採用されている場合があります。合わせガラスは、強化ガラスとは異なり、脱出ハンマーで叩いてもガラス全体が粒状に崩れ落ちるわけではありません。
そのため、脱出ハンマーを購入する前に、愛車の取扱説明書や車両のガラスにある刻印などを確認し、どのガラスが破砕可能なのかを把握しておきましょう。刻印だけで判断するのが難しい場合は、販売店や自動車メーカーに確認するのもおすすめです。
ポイント:脱出時はフロントガラスではなく、破砕可能なサイドガラスまたはリアガラスを使用するのが基本です。
第2章 脱出ハンマーの種類と特徴
車載用脱出ハンマーには、ハンマー型やポンチ型など、構造や作動方式の異なるタイプがあります。また、シートベルトカッターを一体化した製品など、事故や水没時のさまざまな状況に対応できるものもあります。
それぞれ操作方法や必要な力、車内で必要となるスペースなどに違いがあるため、単に「割れやすそう」という理由だけで選ぶのではなく、自分や同乗者が緊急時に扱いやすいか、車内の手が届く場所に安全に設置できるかを確認することが大切です。
ここでは、代表的な脱出ハンマーの種類と、それぞれの特徴を紹介します。
金づち(ハンマー)型:握って叩くスタンダードなタイプ
家庭用の金づちに似た形状で、握って振り、先端の突起部分をガラスに当てて破砕するタイプです。先端には硬い金属などを使用したものが多く、ガラスの一点に衝撃を集中させる構造になっています。
シンプルな構造の製品が多く、操作方法も分かりやすいのが特徴です。一方で、製品によって必要な力や扱いやすさが異なるため、購入時には実際に自分が無理なく握って操作できるかを確認しておくと安心です。
- メリット:構造が比較的シンプルで、握って叩くという直感的な操作ができる。大きさや形状によっては、しっかりと力を伝えやすい。
- デメリット:振るためのスペースが必要。体勢が崩れている場合や車内が狭い場合には、十分に振りかぶれない可能性がある。
ピック(ポンチ)型:押し当てて操作するコンパクトタイプ
小型のスティック状やキーホルダー型など、コンパクトな製品が多いタイプです。先端をガラスに押し当てることで、内部のスプリングなどの機構が作動し、硬いピンをガラスに打ち込んで破砕する仕組みになっています。
ハンマー型のように大きく振りかぶる必要がないため、限られた車内スペースでも操作しやすいのが特徴です。製品によって必要な押す力や操作方法が異なるため、購入前に仕様を確認し、実際の使い方を把握しておきましょう。
- メリット:大きく振りかぶる必要がなく、狭い車内でも操作しやすい。比較的少ない力で操作できる製品が多く、握力や腕力に自信がない人でも扱いやすい。コンパクトな製品が多く、手の届く場所に設置しやすい。
- デメリット:内部にスプリングなどの機構を備えているため、製品によっては経年劣化の影響を受ける可能性がある。また、製品ごとに使用方法や必要な力が異なるため、購入後は取扱説明書を確認しておく必要がある。
シートベルトカッター一体型:シートベルトを外せない場合に備える機能
脱出ハンマーには、ガラスを破砕する機能に加えて、シートベルトを切断するためのカッターを備えた製品があります。シートベルトをバックルから外せない場合や、事故によって車内で体勢が崩れてしまった場合などに、脱出手段のひとつとして役立ちます。
通常はまずシートベルトのバックルを操作して外すのが基本ですが、衝突や横転などによってバックルが破損したり、シートベルトが強く張った状態になったりすると、簡単に外せない可能性があります。また、車が水中に入った場合は、短時間で脱出行動を取らなければならないこともあります。
そのため、脱出ハンマーを選ぶ際は、ハンマー機能だけでなく、シートベルトカッターを備えているかどうかも確認しておくと安心です。
カッターは刃が直接露出しておらず、シートベルトを溝に差し込んで切断するなど、安全に操作できる構造の製品を選びましょう。購入後は、緊急時に迷わないよう、カッターの位置と使い方をあらかじめ確認しておくことも大切です。
第3章 失敗しない脱出ハンマーの選び方
ネット通販やホームセンターなどでは、さまざまなタイプの脱出ハンマーが販売されています。しかし、脱出ハンマーは「車に積んでおけば安心」というものではありません。いざというときに扱いやすく、車内からすぐに取り出せることが重要です。
購入する際は、ガラスを破砕する性能だけでなく、安全性やシートベルトカッターの有無、車内での保管・固定方法なども確認しましょう。
ここでは、脱出ハンマーを選ぶ際に確認しておきたい3つのポイントを紹介します。
JIS規格・GSマーク等の安全基準:性能や安全性を確認して選ぶ
脱出ハンマーは、いざというときに使用する安全用品です。そのため、価格だけで選ぶのではなく、ガラスの破砕性能や本体の耐久性、安全性について一定の基準を満たしているかを確認することが大切です。
国土交通省では、自動車用緊急脱出用ハンマーについて、JIS規格に適合した製品や、GSマークを取得した製品などを推奨しています。購入時には、こうした規格・認証の有無をひとつの判断材料にするとよいでしょう。
- JIS規格:JIS D 5716は、自動車用緊急脱出支援用具に関する日本産業規格です。購入時は、JIS規格への適合やJISマークの表示があるか確認しましょう。
- GSマーク:ドイツの製品安全に関する認証制度で、所定の安全性について第三者機関による確認を受けた製品に表示されます。GSマークの有無も製品選びの参考になります。
ただし、規格や認証だけでなく、メーカーが明示している使用方法や適合するガラスの種類なども確認することが重要です。また、取扱説明書が付属しているか、購入後に車内の手が届く場所へ安全に固定できるかもチェックしておきましょう。
信頼できるメーカーの製品や、自動車メーカーの純正用品として設定されている製品を選ぶことも、安心材料のひとつです。
シートベルトカッターの有無:シートベルトを外せない場合に備える
脱出ハンマーを選ぶ際は、ガラスを破砕する機能だけでなく、シートベルトカッターが付いているかどうかも確認しておきましょう。
通常はシートベルトのバックルを操作して外しますが、交通事故などによってバックルが破損したり、シートベルトが強く張った状態になったりすると、簡単に外せない可能性があります。シートベルトを外せなければ、窓ガラスを破砕したり、車外へ移動したりすることも難しくなる場合があります。
そのため、シートベルトを切断できるカッターが付いた製品を選んでおくと、万が一の際の脱出手段を増やせます。
カッター部分は、刃がむき出しになっておらず、シートベルトを専用の溝に差し込んで切断するなど、安全に操作できる構造のものがおすすめです。購入時にはカッターの有無だけでなく、緊急時に迷わず使える位置にあるか、取扱説明書で使用方法を確認できるかもチェックしておきましょう。
車載ホルダー(固定用パーツ)の有無:緊急時にすぐ取り出せるよう固定する
脱出ハンマーを選ぶ際は、本体だけでなく、車内に固定するためのホルダーや取り付け方法も確認しておきましょう。
脱出ハンマーを車内に置いていても、衝突や横転などの衝撃で床やシートの下に転がってしまうと、緊急時に見つけたり取り出したりできなくなる可能性があります。また、固定されていないものは衝撃によって車内を移動し、乗員に当たるなどの危険につながることもあります。
そのため、運転席などから手が届く位置にしっかり固定できる製品を選ぶことが大切です。専用ホルダーやクリップなどが付属している製品なら、決めた場所に収納しやすくなります。
取り付ける際は、単に「固定できるか」だけでなく、以下の点も確認しましょう。
- シートベルトを締めた状態でも手が届く
- 衝突や横転時にも外れにくい
- ペダルやシフト操作の邪魔にならない
- 同乗者にも保管場所が分かる
- ハンマーをホルダーからスムーズに取り出せる
また、ハンマーの尖った部分が露出している製品では、専用のキャップやホルダーによって安全に保護できるかも確認しておくと安心です。
第4章 どこに置く?いざという時に届く正しい設置場所
「脱出ハンマーを車内に積んでいるから安心」と考えてはいけません。事故や水没などの緊急時には、車内の状況が大きく変わり、普段なら簡単に手が届く場所でも取り出せなくなる可能性があります。
大切なのは、運転席に座り、シートベルトを締めた状態でも無理なく手が届き、すぐに取り出せる場所に固定しておくことです。
また、運転席だけでなく、助手席や後部座席の乗員が脱出する必要が生じる場合もあります。車に乗る人全員がハンマーの保管場所を把握し、必要なときに取り出せるようにしておきましょう。
ここでは、避けたい保管場所と、車内に設置する際のポイントを紹介します。
NGな置き方:緊急時に取り出せない場所は避ける
脱出ハンマーは、車内に置いているだけでは十分ではありません。事故や水没などの緊急時でも、すぐに取り出せる場所に固定しておくことが重要です。
以下のように、運転席から手が届きにくい場所や、衝撃で移動・開閉できなくなる可能性がある場所は避けましょう。
- トランク・ラゲッジルーム:車内から直接アクセスできないため、車両が水没した場合や後部ハッチ・トランクが開かなくなった場合に、取り出せなくなる可能性があります。
- グローブボックス:車種によっては運転席から手が届きにくく、衝撃によって開閉しにくくなる可能性もあります。運転席からシートベルトを締めた状態で無理なく取り出せるか確認しましょう。
- 後部座席の足元やシートの下:走行中の振動や衝撃で移動し、座席の下などに入り込む可能性があります。緊急時に暗い車内で探すことにならないよう、固定して保管しましょう。
- ドアポケットなどの固定されていない場所:衝突や横転時にハンマーが飛び出したり、位置が変わったりする可能性があります。専用ホルダーなどを使って、しっかり固定することが大切です。
「どこに置くか」よりも、「緊急時にシートベルトを締めた状態でも手が届き、確実に取り出せるか」を基準に設置場所を決めましょう。
おすすめの設置場所:運転席から手が届く固定スペース
脱出ハンマーは、事故や水没などの緊急時にすぐ取り出せる場所へ固定しておくことが重要です。設置場所は車種によって異なるため、シートベルトを締めた状態でも運転席から無理なく手が届き、運転操作や乗降の妨げにならない場所を選びましょう。
代表的な設置場所には、以下のようなものがあります。
| 設置場所の例 | メリット | 注意点 |
| 運転席シートの側面付近 | 運転席から手が届きやすく、保管場所を確認しやすい | 乗り降りやシートの調整を妨げない位置に固定する |
| センターコンソールの側面 | 運転席・助手席の両方からアクセスしやすい | シフト操作や収納部の開閉を妨げない位置を選ぶ |
| ドアポケットなどの固定スペース | 運転席から取り出しやすい車種では、身近な場所に保管できる | 衝突や横転時に飛び出さないよう、専用ホルダーなどで固定する |
なお、足元やペダル付近への設置は避けましょう。 ハンマーが移動してペダル操作の妨げになる可能性があるためです。
設置後は、実際に運転席へ座ってシートベルトを締め、普段の運転姿勢から無理なく手が届くかを確認してください。また、助手席や後部座席の乗員が使用する可能性も考え、車に乗る人全員が「脱出ハンマーはどこにあるのか」を把握しておくことが大切です。

第5章 いざという時の正しい使い方と注意点
事故や水没などの緊急時には、恐怖や焦りから普段どおりに行動できなくなる可能性があります。そのため、いざというときに落ち着いて脱出行動を取れるよう、脱出ハンマーの使い方や脱出までの手順をあらかじめ確認しておくことが大切です。
車が水中に入った場合は、まずシートベルトを外し、窓を開けて脱出することを試みます。窓が開かない場合は、脱出ハンマーを使って破砕可能なガラスに脱出口を確保します。
ここでは、シートベルトを外すことから脱出までの基本的な手順と、脱出ハンマーを使用する際の注意点を解説します。
【緊急脱出のステップ】
[1] 落ち着いて状況を確認
↓
[2] シートベルトを外す(外れなければシートベルトカッターで切断する)
↓
[3] パワーウィンドウを操作して窓を開ける
↓
[4] 窓が開かなければ、脱出ハンマーで破砕可能なガラスを割る
↓
[5] 開口部から速やかに脱出する
※破砕するガラスの種類やハンマーを当てる位置・角度は製品によって異なるため、あらかじめ取扱説明書を確認しておきましょう。
ステップ1:落ち着いて状況を確認する
事故や浸水などが発生すると、恐怖や焦りから冷静な判断が難しくなることがあります。まずは落ち着いて車の状態や周囲の状況を確認し、脱出できる方法を判断しましょう。
車が浸水している場合は、水位や車両の傾き、窓やドアの状態などを確認します。脱出できる状況であれば、できるだけ早く行動に移すことが大切です。
ステップ2:シートベルトを外す
状況を確認したら、シートベルトを外します。通常どおりバックルを操作して外せない場合は、シートベルトカッターを使用して切断します。
カッターを使用する際は、製品の取扱説明書に従い、刃に手や指が触れないよう注意してください。

上の図は一例です、実際に使用する製品の取扱説明書に従ってください。
ステップ3:パワーウィンドウを操作して窓を開ける
シートベルトを外したら、パワーウィンドウのスイッチを操作して窓を開けます。
浸水している場合でも、パワーウィンドウが作動する可能性があります。窓が開けば、脱出ハンマーを使わずに開口部から脱出できます。
ステップ4:窓が開かなければ、脱出ハンマーでガラスを破砕する
- パワーウィンドウを操作しても窓が開かない場合は、脱出ハンマーを使用して脱出口を確保します。
- 破砕するガラスは、基本的にフロントガラスではなく、破砕可能なサイドガラスなどを選びます。ただし、車種によってはサイドガラスにも合わせガラスが使用されているため、あらかじめ愛車のガラスの種類を確認しておきましょう。
- ハンマー型は先端をガラスに当てて叩き、ポンチ型は先端をガラスに押し当てて使用するのが一般的です。破砕する位置や具体的な操作方法は製品によって異なるため、購入後に取扱説明書を確認しておくことが重要です。
- ガラスが破砕されたら、割れたガラス片や窓枠に注意しながら脱出口を確保します。
ステップ5:周囲の安全を確認して車外へ脱出する
脱出口を確保したら、周囲の状況を確認し、割れたガラスに触れないよう注意しながら車外へ脱出します。
浸水中は水の流れや周囲の障害物などにも注意が必要です。脱出後も慌てず、安全な場所への移動を優先しましょう。
なお、車が冠水した道路などでは、脱出ハンマーを使う状況になる前に、危険を感じた段階で無理に走行を続けず、安全な場所へ避難することが最も重要です。
第6章 よくある質問(FAQ)
脱出ハンマーは、普段使う機会がほとんどない防災用品だからこそ、「本当に必要?」「どこに置けばいい?」「ガラスはどうやって割る?」など、さまざまな疑問が生じます。
ここでは、脱出ハンマーの選び方・設置方法・使用方法・メンテナンスについて、ドライバーからよく寄せられる疑問をQ&A形式で解説します。
Q1. ハンマーがない場合、ヘッドレストや小銭でガラスは割れませんか?
A. 緊急時の脱出手段として、代用品に頼ることはおすすめできません。
ヘッドレストの金属製ステーを利用して車のガラスを割る方法などが紹介されることがありますが、車種やガラスの種類によってはうまくいかない場合があります。また、緊急時にヘッドレストを取り外し、適切な位置や方法で使用するには、落ち着いた判断と操作が必要です。
小銭やスマートフォン、車のキーなども、強化ガラスを破砕できるとは限りません。特に水没時は時間や体勢が限られる可能性があるため、専用の脱出ハンマーをあらかじめ車内の取り出しやすい場所に固定しておくことが重要です。
なお、脱出ハンマーを使用する場合も、すべてのガラスを破砕できるわけではありません。愛車のガラスの種類を事前に確認し、使用するハンマーの取扱説明書を確認しておきましょう。
Q2. サイドガラスにもスモークフィルムを貼っている場合、問題なく脱出できますか?
A. フィルムの種類によっては、ガラスを破砕しても開口部を確保しにくくなる場合があります。
スモークフィルムや飛散防止フィルムなどがサイドガラスに施工されている場合、ガラスが破砕されても、フィルムによって破片がつながった状態で残ることがあります。そのため、通常のガラスとは脱出時の状況が異なる可能性があります。
フィルム施工車の場合は、使用しているフィルムの種類やメーカーの注意事項を確認しておくことが大切です。また、脱出ハンマーについても、フィルム施工されたガラスへの使用方法や対応について、メーカーの説明を確認しておきましょう。
緊急時にガラス片でけがをする可能性もあるため、破砕したガラスを素手で押し出したり、無理に触ったりするのは避け、製品の取扱説明書に従って脱出口を確保してください。
Q3. 耐用年数はありますか?買い替えのタイミングは?
A. 製品によって耐久性や交換時期が異なるため、一律の使用期限があるわけではありません。
- 金属製のシンプルなハンマー型であっても、長期間車内に保管していると、金属部分のサビや樹脂部分の劣化などが起こる可能性があります。また、ポンチ型は内部のスプリングなどの機構を備えているため、製品によっては経年劣化の影響を受けることがあります。
定期的に以下の点を確認しておきましょう。
- ハンマーの先端にサビや変形がないか
- 本体や樹脂部分にひび割れ・劣化がないか
- ポンチ型の場合、正常に作動する状態か
- シートベルトカッターの刃にサビや異常がないか
- ホルダーが破損しておらず、しっかり固定できるか
- 取扱説明書に記載された交換時期や注意事項に該当していないか
特に、本体に破損や著しい劣化が見られる場合や、メーカーが交換を推奨している場合は、新しい製品への交換を検討しましょう。
また、シートベルトカッターを実際に使用した場合は、刃の状態に問題がないように見えても、次の緊急時に十分な性能を発揮できるとは限りません。一度使用した製品は、メーカーの案内を確認したうえで交換を検討すると安心です。
Q4. 水没したら、すぐに窓ガラスを割るべき?
A. まずシートベルトを外し、パワーウィンドウで窓を開けられるか確認しましょう。
車が浸水した場合は、まず落ち着いて状況を確認し、シートベルトを外します。そのうえでパワーウィンドウを操作し、窓から脱出できる状態にすることを優先します。
窓が開けば、脱出ハンマーを使う必要はありません。パワーウィンドウが作動せず窓を開けられない場合は、破砕可能なサイドガラスなどを脱出ハンマーで破砕し、脱出口を確保します。
なお、車が冠水した道路などでは、そもそも浸水するような場所へ進入しないことが最も重要です。危険を感じた場合は無理に走行を続けず、安全な場所への避難を優先しましょう。
Q5. 電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)でも脱出ハンマーは必要?
A. EVやハイブリッド車でも、脱出ハンマーを備えておくと安心です。
脱出ハンマーは、ガソリン車だけを対象としたものではありません。EVやハイブリッド車でも、事故や冠水などによって車内から脱出する必要が生じる可能性があります。
また、EVやハイブリッド車には高電圧のバッテリーや電装部品が搭載されています。水没時には車種ごとに注意点が異なるため、自分の車に関する取扱説明書やメーカーの安全情報もあらかじめ確認しておきましょう。
脱出ハンマーについても、EV・ハイブリッド車だから特別な製品が必要というより、車種に適したガラスの種類を確認し、緊急時に取り出せる場所へ固定しておくことが重要です。
まとめ
車載用脱出ハンマーは、できれば一度も使う機会がないことが望ましいアイテムです。しかし、交通事故や突然の浸水など、車内から自力で脱出しなければならない状況に備えるための重要な防災用品でもあります。
大切なのは、ハンマーを購入するだけではありません。いざというときに使える製品を選び、運転席から手の届く場所にしっかり固定し、使い方をあらかじめ確認しておくことが重要です。
この記事で紹介したポイントを、もう一度確認しておきましょう。
- JIS規格などの適合状況やメーカーの情報を確認して選ぶ
- シートベルトカッターを備えた製品も選択肢にする
- シートベルトを締めた状態でも手が届く場所に固定する
- 愛車のサイドガラスなどの種類をあらかじめ確認する
- 水没時は、まずシートベルトを外し、窓を開けられるか確認する
- 窓が開かない場合に備えて、脱出ハンマーの使い方を確認しておく
特に重要なのは、「ハンマーがあるから大丈夫」と考えず、危険な場所へ進入しないこと、危険を感じたら早めに安全な場所へ避難することです。脱出ハンマーは、そうした予防策を講じても万が一車内から脱出する必要が生じた場合に備えるための道具です。
この記事を読み終えたら、ぜひ愛車のガラスの種類や脱出ハンマーの設置場所を確認してみてください。普段から準備しておくことで、緊急時にも落ち着いて行動するための備えになります。